J U N E, 2001

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6月30日(土)
 久しぶりにスタテン島行きのフェリーに乗る。そう言えばフェリー無料になったんだったね。観光客みたいに自由の女神側のデッキに陣取り、風に吹かれてぼーっとする。
 夏の水の上の風は気持ちいい。通勤用のフェリーなんだけど、船に乗るっていうだけで何だか遠くに行ったような旅愁を感じる。福岡の能古の島行きのフェリーもそうだったよなあ。泳いだりするのは好きじゃないのだが、水を見ていると心が安らぐ。水の音もしかり。子供の頃は一人でよく近所の海や貯水池に自転車で行って寝転がって本を読んでた。今でも海や川の自然の水を見たくなったら一人で気軽に見に行ける場所じゃないと絶対住みたくない.  
 お金もかからずこんなにリフレッシュできる方法を使わないなんてもったいない、もっとしょっちゅう来なくちゃ!と思うのだが、そう思っているうちにこれがまたすぐ2年ぐらいたっちゃうんだよね。


6月29日(金)
 日本から来た友達が明日帰るので、クリスチャンと3人で食事をする。場所はウエストビレッジにあるカフェ・アシアンという小さな東南アジアレストラン。狭い入り口からは想像もつかないが、奥には小さなかわいいガーデンがある。
 サマーロールやニラ餃子、サテなどアペタイザーをいろいろ頼み、メインはビーフとかぼちゃのココナッツカレー。安くて辛くておいしく、手作りっぽい内装もかわいいしゲイのウェイターによるサービスもよい、というビレッジらしい私好みのお店だ。辛いものが食べられないのが今日はつくづく残念だった。
 食後はリトル・イタリーにある「マキアロズ」という古-いイタリアンバーに行く。バーの後ろにある大きな鏡は年月を経ていいぐあいに曇っている。古-い柱時計とジュークボックスがあり、葉巻を加えた「いかにも」の顔つきのイタリア人店主が目を光らせている、全てにおいて「いかにも」の店だ。その雰囲気はセットでは容易に再現できないからだろう。ゴッドファーザーやナインハーフなど、いろんな映画のロケで使われている。しかしこんなお店でもバーテンダーが二人とも中国系だったのは、チャイナタウンがリトルイタリーにどんどん進出している現状をものがたっていて興味深かった。
 ここでクリスチャンの幼なじみのケラとその友達と落ち合う。いつも通り12時くらいに帰ろうとするがまわりが帰してくれない。結局チャイナタウンのバー「ダブルハッピネス」までつきあう事になる。ここはチャイナタウン唯一の非中国系バーで、以前は娼館だった場所を改装してバーにしたとかしないとか。入り口にはサインなどなく、半地下でいわゆる「隠れ家的」なお店というヤツだ。こういうのってあざといけど、誰でも知っているわけではないお店を私だけが知っている、という心理をくすぐるよね。店内はおよそチャイナタウンとは縁がなさそうな今風の若い客でいっぱいだった。内装はコンクリートや石を随所に使ってあって隠れ家というより隠し砦のような作りだ。天井が低く閉所恐怖症には耐えられそうにない。仕切りがたくさんあって、ちょっと雰囲気が違う空間がいくつも作ってあるのが気に入った。日本から来た友達を連れていったらちょっと通ぶれるかもよ。


6月27日(水)
 ブルーノートでディジー・ガレスピー・アルムナイ・オールスターズを見る。日本から来た友人が一緒だったのだが、レストラン業界で働く彼が目をつけていたレストランに10時に予約を入れてあったので途中で出る事になる。グラマシー・タバーンのシェフがオープンしたCraftというお店だ。入ってすぐガラス戸のようなものが目につき、変わったインテリアだと思ったらバーの後ろ全面を埋め尽くすワインセラーだった。メニューがちょっと変わっていて、フランス料理のように、「○○の●●ソース、××添え」とかではなく、「グリルド」とか「ブレイズド」とか「ソテード」というシンプルな料理法の下に、材料の名前がずらっと並んでいる。サイドディッシュはジャガイモやキノコなどの何種類か違う調理法が並んでいる。素材を重視して調理法はシンプルに、というポリシーが明らかで、すごく共感を覚える。ライブの前に軽く食べていたので量は少ししか食べなかったが、食べたものはどれもおいしかった。今度はちゃんとお腹をすかしてもう一度来たいところだが、ポーションはかなり少なく結構いいお値段なので、そうそう気軽には来れそうにない。
 真夜中近く、ジンクバーにリチャード・ボナを見に行く。相変わらずいい曲書くよなあ、リチャード・ボナ。新曲なのかちょっとスムーズで都会的な曲もやっていた。個人的には以前からのレパートリーのアフリカっぽいアーシーな曲の方がじーんと来るが。ボナのライブに来ている人は本当に彼の音楽が好きな常連がほとんどで、皆がうっとりするような柔らかい表情でボナを見つめている。いつもそうなのだが、彼のライブに行くと横にいる赤の他人とも集合的な何かを共有しているような不思議に暖かいバイブに包まれる。彼のためには早くもっと大きなところで演奏できるようになってほしいような気もするが、そうなるときっとこの一体感は生まれないよなあ、と思うと残念な気もする。こういうのってまさにファン心理かな。


6月26日(火)
 先週末作り始めたバッグが完成したので会社に持っていく。古着のドレスの布地を使った持ち手がバンブーのちょっとノスタルジックなバッグ。地の色はオレンジで、小花模様と小さなペーズリーが全体に散りばめてある。 ペーズリーの部分は光沢があるので、天気がよい日に戸外を歩くと陽の光できらきら光ってとてもキレイだ。結構イメージ通りにできたので、自分でも気に入っている。グラフィックデザイナーのリナもすごく気に入って、買うから作ってくれって。ただほめられるより最高のほめ言葉だよね。


6月24日(日)
 気分転換にネイルサロンに行く。
 ニューヨークに来たばかりの頃はネイルサロンに行くなんてとんでもない贅沢のような気がしたが、おそるおそる行くうちにいつのまにかすっかり慣れてしまった。
 ペディキュアには特に中毒性がある。足の裏には相当の数のツボがあるそうだが、快感を刺激するツボがかなり含まれているのは間違いない。 サロンでは単にペディキュアをしてくれるだけじゃなく、足の裏のマッサージはもちろん、硬くなった皮膚をこそげ落としてくれるわ、 スクラブをしてくれるわ、赤の他人にここまでしてもらっていいのかと思うぐらい至れり尽くせり。フットバスにつけた皮膚がふやけると同時に、 頭の中までふやけてしまうぐらい気持ちいい。
 夏になると特に街行く人のサンダルからのぞく足もとが気になる。全身ばっちりコーディネートしていても、ペディキュアをしてなかったり、はげかけていたりするとそこにその人の隙がかいま見える。逆に、ふと目にした指先が明らかにプロの手による美しいカーブを描いているのにはっと気がついた時には、その人の経済的、精神的ゆとりを目の当たりにしたような気がする。
 私がイメージするお洒落な大人の女性とは、20代の体型を保ち、化粧はあくまでナチュラルメイク。ベーシックな色とデザインの上質な洋服を身につけ、遊び心のある色使いやデザインのバッグと靴をコーディネートのアクセントにする。そして決め手は完璧なマニキュアとペディキュア。そういう人に私は、なりたい。


6月23日(土)
 6月ももう終わりに近づいているなんて信じられない。
 以前母親にもらった手紙に「人生、幸せの40%は健康」という趣旨の事が書いてあった。パーセンテージはもしかしたら60%だったかも知れないし、 どちらにしても一体誰がどうやってそのパーセンテージを割り出したんだ?とは思うが、確かに健康を害していると日常生活を営むだけでエネルギーを使い 果たしてしまって人生楽しんだりする余裕がないのは本当だ。
 病院でもらった薬で咳はほぼ止まったのに、この3週間はどうも調子が出ず、仕事が終わったら早く家に帰りたい一心だった。
 普段外出するのはあまり苦にならないので、そんな気分の時はその気分を大切に味わおうと、家で本を読んだりケーブルで映画を見て過ごしたが、 どうも気分はますます滅入っていくばかり。なんでだ-?医者に「カフェインと辛いものは摂らないように」と言われ、それを守っているからかも知れない。
という事は、普段の私はカフェインと唐辛子で無理矢理気分を高揚させていただけだったのか?


6月3日(日)
 友達に誘われてチェルシーホテルの屋上パーティーに行く。主催者も趣旨も知らなかったのだが、初夏の夕方をチェルシーホテルの屋上で 過ごすなんて、何だか気持ちよさそーと思ってついていったのだ。行ってみると、ホテルの最上階に住んでいるリタという女性アーティストの 誕生日パーティーだった。リタは60歳くらいだろうか。黒髪のショートカットがよく似合っていて笑顔が可愛いらしい女性だった。
 場所がチェルシーホテルという事で、もしかしてドラッグとか何でもありのワイルドなパーティーだったらどうしよう?とかちらっと頭に よぎったのだが、アパートの至る所に「マリファナ厳禁!」とか「煙草は木のデッキでは吸わないこと!」とか注意書きが貼ってあって、 無駄な心配に終わった。そうだよね、アンディー・ウォーホルが住んでいた頃のチェルシーホテルじゃあるまいし。
 しかし逆に言えば、書いてないとすぐに吸い出す人たちだった、という事かも。確かにゲストは大半が40代、50代の元ヒッピーで、昔はありとあらゆるドラッグをやってましたー、という 顔つきだ。彼女が関わっているシアター関係の人を中心にミュージシャンや詩人、ジャーナリストなど、ニューヨークらしい職業の人が多かった。ドラッグのやり過ぎか、明らかに反応が普通の人より0.5秒ぐらい遅いダダ詩人とか、 インドネシアに住んだ事があって、インドネシアの専門家向けにオンラインでニュース配信サービスをしている人とか普通だったら知り合わないような 人とも話す機会があっておもしろかった。
 チェルシーホテルの屋上がどうなっているかも興味津々だったのだが、アパートを抜けるとガーデン用の テープルや椅子が置いてある20畳ぐらいの広いテラスに出て、そこから木製の階段を上がった所にも また20畳くらいのデッキがある。そこかしこに木がうっそうと繁っていて、 マンハッタンのビルの屋上というより、普通の家の庭のようだ。 しかしマンハッタンの北と南両方が広く見渡せて、エンパイアステートビルもすぐそこにあるのだから贅沢な事この上ない。 そんな環境で、夕暮れ時の少し涼しくなった時間に、チーズやパテをつまみながら とりとめのないおしゃべりをするのは思った以上に気持ちよかった。
 ここでも咳が出て止まらず、まわりが水を持ってきてくれたり、飴をくれたりと気を使わせてしまったので、 やっぱり一度病院に行こうと思う。

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